今回もAIを駆使しながら書いたブログ記事になります。
少し前置きをさせてほしい。
僕はiRacingを長年やってきた。配信もさんざんやったし、機材に関しても様々なものを使ってきた。
それなりにこのタイトルに時間とお金を注ぎ込んできたつもりだ。
だからこそ、今回はフラットに問いたい。
「iRacingはeモータースポーツのタイトルとして、本当に向いているのか?」
これは批判ではない。愛があるからこそ向き合える問いだと思っている。
🏎️ iRacingは何のために作られたのか
まずiRacingという製品が何を目指して設計されたかを整理しておきたい。
iRacingは2008年にサービスを開始した、サブスクリプション型のオンラインレースシミュレーターでその設計思想は一貫している。
「競技者のために、公平な競技の場を作る」
その象徴がiRatingとSafety Ratingという2つのシステムだ。
iRatingは選手の能力を示す指標で、似た実力のドライバー同士が同じレースに集まるよう設計されており、iRatingが高くなれば高くなるほどレベルの高い選手とレースをすることになる。
Safety Ratingはコース上でどれだけ安全に走れているかを示す指標で、インシデント数をベースに計算され、例えばコース外にはみ出して走行すればインシデントがついたり他車と接触することでもインシデントが付く。
インシデントが溜まることで最終的にはそのレースから強制退出させられることもある。
この2つは「速さ」と「クリーンさ」を別々に管理することで、走る実力が近い選手同士が、きれいなレースをできる環境を作るという思想から生まれている。
さらにこのSafety Ratingにはライセンス制度が紐づいていてドライバーはRookieからA-Classまでのライセンス段階を持ち、Safety Ratingが一定水準を超えることで上位クラスのレースや車両に参加できるようになる。
つまり速さがあっても他車と接触することが多かったり、オーバーテイク時にコース外使ったりしているとより速度の速い車両、上位クラスのレースに出場することはできないということだ。
これはリアルモータースポーツのライセンス制度をそのままバーチャルに持ち込んだような構造だ。
実際にiRacingでレースをしていると、この完成度の高さは痛いほど分かる。
接触一つに対してシステムが判定を下し、自分のレーティングが増減するため「ゲームをやっている」ではなく、「競技に参加している」という感覚があり、特に初めてiRacingをプレイするユーザーにとっては「こんなレース体験がしたかった!」と思ってしまうことだろう。
しかし同時に、配信しながらこのレースを流していると「これを外から観ても凄さが伝わらないだろうな」とも感じてきた。
📺 観戦タイトルとして見たとき、何が足りないか
ここが核心だ。
iRacingは「競技者のための設計」であって、「観客に見せること」は当初の設計思想の外側にあると言っていい。
iRacingは創設当初から「eスポーツとして」開発されており、集中管理された競技構造の中でオフィシャルのマルチプレイヤーレースを実現することを目指しており、単に最先端の物理シミュレーターを作るのではなく「完全なオンラインスポーツ」を構築することが目標だったとiRacing公式の発表でも明言されています。
しかしここで言う「eスポーツ」は今日の意味——TwitchやYouTubeでの配信、視聴者を集めたショー的な演出——とは異なり、**競技の公平性・ランキング・昇格システムを備えた「スポーツの競技性そのもの」**を指していました。
そもそもTwitchのサービス開始は2011年、YouTubeライブも同年であるため今日のような配信文化が本格化するのはさらにその後のことだ。
つまりiRacingの開発が始まった2000年代初頭には「配信で観客を集める」という発想自体が存在しなかったと考えるのが当然だし、iRacingが「観戦されること」を設計思想に含めていなかったのも時代的に当然のことだったと言える。
ではなぜ今日のeモータースポーツでiRacingが使用されているかというと、COVID-19パンデミックで現実のレースが軒並み中断した2020年、プロドライバーたちがiRacingに流れ込み、各種レースがTwitch・YouTube・Facebookでコメンタリー付きで配信されて大きな注目を集めました。
多くのプロドライバーたちがプレイすることでユーザーは劇的に増え、それまでなかった規模のコミュニティが出来、コミュニティイベントも数多く行われユーザー手動の配信レースや配信者によるレース配信が世界各地で行われるようになったのです。
※僕がiRacingをプレイし始めてからコロナ禍でユーザーが増えるまでの日本人ユーザーは500人にも満たなかったように記憶しています。
これがiRacingにとって事実上の「配信文化との本格的な接点」であり、設計上の想定ではなく外部環境の変化が生んだものと見るのが自然です。
現在成功しているeスポーツタイトル、例えばLeague of LegendsやValorantには、観戦UI・リプレイ機能・配信オーバーレイ・APIなどが最初から組み込まれている。
ここで一つ興味深い事実がある。
現在eスポーツの代名詞とも言えるLeague of Legendsも、2009年のリリース時点ではスペクテイターモード(プレイヤーとして参加せず、試合を観客として観戦できる機能)は存在しなかった。
観戦機能が初めて披露されたのは2011年の第1回世界大会、一般公開されたのは2012年のことだ。
つまりLoLも最初から「観せるゲーム」として完成していたわけではない。
しかしRiot Gamesが行ったのは、eスポーツ大会の開催と観戦機能の整備を同時並行で進めるという判断だった。
大会を作りながら観戦UIを磨き、基本無料というモデルで間口を広げ、「観る人」と「プレイする人」を同時に増やす構造を意図的に設計していった。
iRacingとLoLの本質的な違いはここにある。
iRacingは競技の純度を先に作り、LoLは競技と観戦を同時に育てた。
どちらが正解だったかは、現在の両タイトルの観客規模を見れば明らかだ。
ただしiRacingが目指したものはそもそも「観せること」ではなかったのだから、これは結果論に過ぎないとも言える。
では現在のiRacingの配信環境はどうなっているのかというと、iRacingにはデータ取得用のSDKが公開されており、サードパーティのツール開発者がこれを活用している。
ATVOのような配信グラフィックツールやSDK Gamingのオーバーレイツールは、世界の主要なeスポーツ選手権や配信者にも採用されている。
つまりiRacingの配信環境は、公式ではなくサードパーティのコミュニティが支えているという構造だ。
これはある意味でiRacingのオープンなエコシステムの強みでもある。
しかし同時に、大会配信のクオリティが「誰がどれだけツールを使いこなせるか」に依存してしまうという弱点でもある。
FPSやMOBAが配信で盛り上がる理由の一つは、初めて観た人でも「何が起きているか」が直感的にわかるUIと演出がゲーム側に最初から備わっているからだ。
iRacingは残念ながら、そこは後発だ。
🖥️ グラフィックという問題
さらにもう一つ、見落とされがちだが重要な問題がある。
グラフィックだ。
iRacingのグラフィックは、正直に言えば現代のレースゲームと比較すると見劣りする。
単純に見劣りする、とだけ書くと「いやいやそうじゃない」「分かってないなぁ」という意見が出そうではあるが、現代のリッチなグラフィックのレースゲームと比較すれば見劣りすると言わざるを得ないだろう。
例えばグランツーリスモ7やForza Motorsportのような最新タイトルは、車体の映り込み、路面の質感、天候の変化など、映像として観ているだけでも圧倒されるようなクオリティに達している。


しかしiRacingのグラフィックエンジンは長年大きく刷新されていないにも関わらず、プレイヤー目線では「見やすい」と感じ「むしろこのグラフィックが良い」と多くのプレイヤーが言っているのも確かであるし、実際に僕自身もそう感じながら長年プレイしてきた。
個人的にiRacingの一人称視点は他のどのレースゲームに比べても遥かに運転しやすいと感じている。

しかし「外から観る人間」の視点はまったく違う。
ゲームに詳しくない一般の視聴者が配信を偶然目にしたとき、最初に判断するのはルールでも競技性でもなく「映像が綺麗かどうか」だ。
これは残酷なほどシンプルな現実だと思っている。
もちろんグラフィックが綺麗なことがeモータースポーツの本質ではない。
しかしそれはプレイヤー側の意見であってゲーム画面の綺麗さというのはゲームに詳しくない層が興味を持つかどうかの、最も分かりやすい入口の一つなのである。
もう少し分かりやすい例を出すのであれば昔のブラウン管テレビの画質で今のテレビ番組を見たり現代のゲームをしたいと思うだろうか?
ブラウン管テレビからフルHDの画質に変化したときの感動、フルHDから4K画質に変化した時の感動を想像してもらえれば、グラフィックの綺麗さがゲームに詳しくない層に対する影響力は理解に容易くないと思うし、少なくともゲームプレイ以外の観戦映像や公式配信においてはグラフィックが綺麗であることにマイナスは一切ない。
ただ、この点については明るい話がある。
iRacingは現在、自社開発による完全新設計のグラフィックスエンジンを開発中だ。
このエンジンはGPU駆動のアーキテクチャを採用し、CPUへの負荷を最小限に抑えながらiRacingの外観とパフォーマンスを根本から刷新するものとされている。
注目すべきはその開発方針だ。
iRacingはUnreal Engineのようなサードパーティのエンジンではなく、カスタムエンジンの自社開発を選択した。
その理由はシミュレーションレーシングの特殊な要件に完全に対応し、2030年代にわたって維持・進化させられる持続可能な基盤を作るためだという。
新エンジンはディファードレンダリングを導入しており、パフォーマンスを犠牲にすることなくより複雑な照明と影の計算が可能になる。
さらに50人以上のアーティストが既存トラックのアップデートに専従しており、新グラフィックスエンジンを最大限に活かせるよう既存コンテンツの整備も並行して進めている。
つまりiRacingは「グラフィックの問題を認識していない」わけではない。むしろ長期視点で根本から作り直すという選択をしている。
この自社開発ということのメリットをもう少し深堀りすると、自社開発のカスタムエンジンということは自分たちのルールでゲームを作れるということだ。
簡単に言えば市販車をベースにレースカーを作るのか、それともゼロからレース専用車を設計するのか、という違いに近い。
市販車ベースでも速くはなる。
でも本当に突き詰めたいなら、最初から競技専用で作った方が限界が違う。iRacingはエンジンをそのレベルで作り直そうとしている。
こうした明るいニュースはあるものの、今のiRacingにおいてはプレイする側が今のままでも十分だとしても観る側を増やしたいなら見た目は無視できない要素だと思っている。
新エンジンがリリースされたとき、iRacingの配信映えがどう変わるか。長年のユーザーとして、そこには素直に期待している。
💰 敷居の高さ:競技の純度を守る諸刃の剣
eモータースポーツタイトルとして考えたとき、iRacingのコスト構造はもう一つの重要な論点だ。
iRacingはサブスクリプション制で、マシンもコースも基本的に別途購入が必要になる。
本格的な環境を揃えようとするとマシンやコースの購入だけで数万円規模になることも珍しくないし、さらに言えばiRacingを快適に動かすにはそれなりのPCスペックも必要で、ハードウェアも含めると入門コストはかなり高い。
その一方で以前noteでも書いたことがあるが、この敷居の高さには競技の品質を守るという側面がある。
お金を払ってまで荒らしに来るユーザーは少ないし、子どもが気軽に手を出しにくい。
課金しているからこそ本気でレースに向き合うプレイヤーが集まるためiRacingのレースがある程度クリーンに成立しているのは、この課金構造がフィルターとして機能しているからという部分が大きい。
しかしeモータースポーツの観戦コンテンツとして広げるという文脈では、この敷居の高さは明確なマイナスに転じる。
観客を増やすためにはまず「自分もやってみたい」と思わせることも重要だ。
FPSやMOBAが爆発的に広がった理由の一つに無料または低コストで始められるという間口の広さにあり、配信を観て興味を持った人がその日のうちにダウンロードして試せる環境があった。
現にeスポーツとして有名なリーグ・オブ・レジェンドやエーペックスレジェンズといったゲームタイトルは無料でプレイすることができる。
しかしiRacingにはそれがない。
観戦して「面白そう」と思っても始めるまでに越えるべきハードルが多すぎて、PCが必要、サブスクが必要、マシンとコースも購入が必要、ハンコンがあった方がいい……。
このギャップが「やってみたいけど始められない」という層を生む構造になっている。
競技の純度を守るための敷居と観客を増やすための間口の広さはiRacingにおいて根本的に矛盾している。
そしてiRacingはこれまで明確に前者を選んできた、いや前者から始まっている関係上仕方ないとも言える。
それはiRacingというタイトルのアイデンティティとして正しい選択だったとも言えるが、eモータースポーツの普及という観点では課題として残り続けている。
🎮 ではグランツーリスモはどうか
グランツーリスモはiRacingとは違いプレイステーションというコンシューマ機で展開され、同じレースゲームというジャンルではあるもののまったく別の種類の問題を抱えている。
グランツーリスモシリーズは世界累計1億本以上を売り上げた、レースゲーム最大級のIPだ。
間口の広さと認知度という意味ではiRacingとは比べ物にならずHonda Racing eMSのように、GT7を使った国際大会には世界70カ国以上から延べ20万人以上が参加した実績もある。
しかし、ここに大きな制約がある。
ブランド管理の厳格さだ。
SIEとPolyphonyはグランツーリスモというブランドを非常に厳格に管理しており、サードパーティが自由に大会を企画する・独自に収益化する・配信イベントを展開するという点でハードルが高い構造になっている。
また配信面でも長らく問題があった。
GT7のプレイ動画をYouTubeで配信する場合、配信モードを有効化しないと著作権フィルターに抵触する可能性のある楽曲がBGMとして流れてしまうという問題が発売後しばらく存在していた。
これはアップデートで対応されたが「配信が前提」のeモータースポーツタイトルとして最初から設計されていたなら、リリース時点で解決されているべき問題だったとも言える。
また、プレイステーションというゲーム専用のハードウェアという点も配信に対して制約を与えているのも確かな点であり、グランツーリスモの問題は技術的なものではなく、ビジネス構造と設計思想の問題だ。
ブランドの品質を守ること自体は正しい。
しかし結果として「サードパーティが自由にeモータースポーツコンテンツを作れる環境」にはなりにくい構造を生んでいる。
📊 フラットに比較するとこうなる
感情を抜いて整理してみる。
| iRacing | グランツーリスモ7 | |
|---|---|---|
| 競技性・公平性 | ◎ 圧倒的 | △ 競技向け設計ではない |
| 間口の広さ | △ サブスク・高コスト・PCのみ | ◎ PS4/5で手軽 |
| 認知度・ブランド力 | △ コアなファン向け | ◎ 世界的ブランド |
| 観戦UI・公式配信ツール | △ サードパーティ頼み | △ 設計が後発 |
| グラフィック | △ 現世代では見劣り(新エンジン開発中) | ◎ 現世代トップクラス |
| サードパーティの自由度 | ○ SDKが公開されている | △ ブランド管理が厳格 |
| 大会主催のしやすさ | ○ 比較的自由 | △ 許諾・制約が多い |
| eモータースポーツへの適性 | ○ 競技の場としては最適 | △ 普及の入口としては強い |
どちらが優れているという話ではない。
得意なことが根本的に違うのだ。
iRacingは「競技の純度を上げる」ことに特化していてグランツーリスモは「モータースポーツの入口を広げる」ことに強い。
✅ それでもiRacingの強みは本物だ
ここまでiRacingの課題を中心に書いてきたが、強みについても整理しておきたい。
リアルドライバーとの接点という点では、iRacingは他のタイトルの追随を許さない。
Max VerstappenやLando Norrisといった現役F1ドライバーが実際にiRacingでレースをしているし、国内でもプロドライバーたちの多くがiRacingでリアルモータースポーツに対するトレーニングとして活用している。
現代のモータースポーツ界においてはiRacingに限らずレーシングシミュレーターは欠かせない存在なのだ。
コロナ禍にはF1ドライバーたちがiRacingでのバーチャルレースを配信して世界中で大きな話題になったし、リアルモータースポーツとiRacingの間には他のレースゲームにはない本物の繋がりがある。
これはeモータースポーツタイトルとしての差別化ポイントとして非常に強く「リアルのF1ドライバーも使っているシミュレーター」という文脈は、単なるゲームとは別次元の説得力を持つ。
また競技インフラの完成度という意味でも、iRacingは現時点で他の追随を許さない。
iRatingとSafety Ratingによる公平なマッチング、ライセンス制度、ペナルティシステム。
これらが積み重なることで「真剣にレースをしている人間が集まる場所」として機能しており、世界各地に存在するドライバー達と日々競技レースをするという点においてiRacingを上回るレーシングシミュレーターは無いと言い切っても良い。
eモータースポーツが「競技スポーツ」として認められるためにはこの競技インフラの存在が欠かせない。
その意味でiRacingはすでに重要な基盤を持っている。
つまり、課題は外側にある。内側はほぼ完成している。
🧭 では答えは何か
正直に言えば、どちらか一方が「eモータースポーツに最適なタイトル」だとは思っていない。
理想を言えば、iRacingの競技設計とグランツーリスモの間口の広さを兼ね備えたタイトルが登場したとき、eモータースポーツは次のステージに進めるのかもしれない。
あるいは現実的には、「競技の場はiRacingで、エントリーの場はグランツーリスモで」という自然な棲み分けがすでに生まれつつある気もしている。
ただ一つ言えるのは、どちらのタイトルも「観戦されること」を最初から前提に設計されてはいないという点で、eモータースポーツが観るスポーツとして成長していくためには、まだ埋めなければならないギャップがあるということだ。
🔚 それでも僕はiRacingが好きだ
最後に個人的なことを言う。
散々iRacingの課題を書いてきたが、それでも僕はiRacingが好きだ。
現時点でiRacing以上にレースの競争を楽しめるレースゲームを、僕は知らない。
あの競技の厳しさ、iRatingとSafety Ratingが作り出す緊張感、世界中のドライバーと同じ土俵で戦える感覚。
なによりゲームであるにも関わらず練習もせず気軽にレースに出ようとはならず、練習したとしてもレースに出場すること自体を躊躇う気持ちになる、というのは他のタイトルでは絶対にない。
だからこそ、iRacingが観戦コンテンツとしての側面をもっと強化していったらどうなるかと思う。
競技の純度はそのままに、外から観ている人間も引き込めるようになったとき、iRacingはeモータースポーツタイトルとして今より一段階上の存在になれるのではないかと、長年のユーザーとして期待している。🏁